If for No Other Reason Than

けっこうな年になるまで、デヴィッドボウイは「嫌いなミュージシャンの代表」だった。何もかもが大嫌いだった。その後、いったん好きになってしまってからは、はしかにかかったことのなかった大人みたいな状態になった。

昔、「あんたみたいなのがボウイを嫌いだったら、どうやって生きていくんだ?」と私に問うた K 氏は、私が初めて一緒に暮らした恋人だった。このギター弾きの変人と同棲したいと思ったから、すぐに大学を辞めてホステスになった。そのあと 4 年間、一緒にいた。

K 氏は、とっくに死んでいる。ボウイも死んだようだ。ところでなぜ私はまだ生きているのだろうか。ぜんぜん分からなくなってきた。