Every Love Story Has an End

ほとんど全ての方にとって、心の底からどうでもいいことだろう。しかしコキール男爵、およびその他の「私が書いた食べ物の話」を読んでくださった方々に白状しておきたいことがある。

物心ついたときから、私は本気でロースカツ定食を愛していた。ずっとあなたが一番だから、他の誰とも比べものにならないから、この気持ちは死ぬまで変わらないから、と思っていた。しかし、どうやら私のロースカツ定食愛は終わったらしい。こんな日が来るとは思わなかったので、自分でも驚いている。決して相手のことを嫌いになったわけではない。ただ、ある瞬間から急に「ああ、この人は意外とお高くとまってるっぽいところがあるんだよな、そういうところ、本当は好きじゃない」と感じるようになった。もちろん、あいかわらずロースカツ定食は素晴らしいままだ。でも心のどこかに「ちょっと押しつけがましい美味しさなんだよな」と思ってしまう心が芽生えていたのを、もう無視できなくなっていた。

なにしろ長い時間が経っている。あちらが変わってしまったのか、こちらが変わってしまったのかは分からない。どちらのせいでもないのかもしれない。ただ、私は「美味しいもの」を食べたがる人間ではない。味が良かろうと悪かろうと、とにかく「いま自分の欲望を掻き立てるもの」「はじけそうな欲望を満たしてくれるもの」を食べたいと願う人間だ。ロースカツ定食は、私に両方を与えてくれた。いつだって完璧だった。

ほんの半年前までの私は、ロースカツ定食の姿を思い浮かべるだけで興奮した。店に向かう間はずっとドキドキした。自分の注文したロース肉が油に投入されれば、いとおしさと待ち遠しさで胸が張り裂けそうになった。だけど今は違う。「今は違う」ということを認めたくなかった。気づいてないことにしたかった。しかしドキドキしているふりをしても無駄だった。もう自分を騙せなくなっていた。どうしていいのか分からなかった。半年ぶりのロースカツ定食を食べている最中も「……ええ、美味しいですよ? 決まってるじゃありませんか。待ちに待ったロースカツ定食ですよ? すんげえ喜んでますよ、むちゃくちゃ大好きですよ、当たり前でしょう、なんですか、まさか私を疑ってるんですか?」などと、脳内で自分に喧嘩を売り始める始末だった。

本当に残念で仕方がないけれど、もうロースカツ定食が私のナンバーワンではなさそうだと気づいた瞬間、いまの自分にはもっと好きになれそうな相手がいるじゃないかということにも同時に気づいてしまった。驚いたことに、そのときの私は「ロースカツ定食を食べるために入った店で、新たなナンバーワン候補を試す」という非道な行動に走ることすらできた。そして自分の考えが正しかったことを確認したのだ。その冷酷な行動が自分でも恐ろしかった。

もしも私とロースカツ定食の関係を引き裂けるものがあるとするなら、おそらくは病か死だけだろうと思っていた。でも違った。いまならはっきりと断言できる。どんな関係でも終わるときは終わる。30年以上、本気でがむしゃらにひたむきに愛しても結果は同じだ。きっと永遠の愛なんてものは存在しない。というわけで、ロースカツ定食はもはや「私の最も好きな食べ物」ではなくなった。

いまはトンカツ定食が、その王座に就いている。そのことを皆さんにお伝えしておきたかった。