My Friend’s Boyfriend 2

前回の続き)

友人Sの彼氏、非常にエロい彼氏は、Sと同様に「ええとこの坊ちゃん」だった。インドの上流階級出身者は、日本の金持ちとは桁違いの凄みを持っている場合が多いと思うのだけれど、彼も例外ではなかった。彼の話の多くは、彼の血筋がいかに由緒正しいものであり、いかに裕福なファミリーであり、いかに彼が恵まれた教育を受けることができたのかという説明に費やされていた。

友人の彼氏の悪口を言いたくはない。しかし、ここでは言おう。彼の話は、最初の数分間だけ「へー」とか「はー」とか感心しながら聞けるものだったが、要するに単なる自慢話なので、びっくりするほど面白くないのだった。いや、話が面白くないことは別に構わない。別に構わないのだが、初対面の人々に向かって自分のファミリーのことを延々と語るような相手と、どんな風に距離を取ればいいのかが分からない。

そして彼の発言は、いちいち「インド出身」を誇り、なにかと西洋文化を非難することに熱心なのだった。それは「封建的な同性愛者もいる」ということを認識していたはずの私も、さすがに面食らうほどのものだった。「本来であれば、ネパールで暮らしたり、あるいはカナダに移住したりすることが許される人間ではないのですが、自分はこんなことになっています」と彼は冗談めかした笑顔で語る。先に移住している我々に、そんなことを笑顔で語られても困るのだが、おそらく彼は、「相手の気持ちを気遣う」スキルを教えるような家庭に生まれていないのだから、仕方ないのだろう。

こういう人物であるため、自分を汚すものに対しては厳格であり、その厳格さが周囲に与える印象など気にしない。普段から肉も魚も食っている我々に向かって、彼は宝石のような美しい瞳で語るのだった。

「私の一族は、もう数えきれないほど何代も前から、肉によって血を汚さぬようにしてきました。だから私は、肉料理に触れたスプーンや、肉を切った包丁が、自分の料理に利用されるかもしれないということを、いつも心配しているのです」
「はあ」
「私は、先祖たちが守り続けてきた汚れのない血を受け継ぎました。私は、それを台無しにしたくありません」
「はあ……いや、しかし……」
「何ですか?」
「いえ、なんでもないです」

しかし君はゲイなのだから、その綺麗な血を残すことはないのだろう。ここで終わりだ。だったら、せっかくだから汚しまくるのも素敵なことじゃありませんかねえと。そう明るく言い放ちたいのを、私は必死で堪えていた。それは勘の悪い私にも分かる、絶対に踏み越えてはならないボーダーラインだと思った。

続く