実家の近所の商店街で、中学生ぐらいの娘さんたちがハンドベルの演奏をしていた。お上手な演奏ではあったのだけれど、そのメロディが耳に届いている間、私の内臓はきりきりと痛み続けたのだった。「自分が当事者でなくても、いたたまれない気持ちになるもの」のリストにハンドベル演奏を追加しよう。
このリストの一位は「子供の集団による大縄跳びチャレンジ」だ。あれは参加者の数が増えれば増えるほど恐怖も募る。まして「××小学校の全校生徒が連続縄跳びの記録に挑戦します、テレビカメラも入ってます、生中継です、全国のみなさんが見ています、さあチビっこたち、みんな心をひとつに合わせて頑張れ!」みたいな企画を目にしてしまうと泣き出したくなる。最初の数人が一糸乱れぬ動きで大縄を飛び始めると、たとえ何を犠牲にしてでも今すぐここから逃げ出したいという気持ちに駆られる。誰でもいいから助けてくれ、私をこの体育館から出してくれと叫びたくなる。どうしても飛びたくありませんと言いながら床を転げ回りたくなる。自分は何も関係ないのに。最初から逃げるまでもないのに。
もしもできることなら、私は「全員が行動を揃えることに意義がある催し」「たった一人の失敗で全員が落ち込む羽目になる催し」を地上から完全に消し去りたい。根絶したい。この世界から、せめて一つでも多く排除したい。特に集団大縄跳びみたいなタイプの、「誰かが失敗しないかぎり(=誰か一人が全員に迷惑をかけないかぎり)は終わることがない系」の催しは。あれは本当にやめよう。必ず誰かが傷つくじゃないか。やめようよ。みんな。頼むからやめよう。
そういえば、いま思い出した。私が子供の頃、正月にテレビでやってた「新春かくし芸大会」、あれも部分的にキツかった。タレントが集団になってグラスハープとかやってる姿を見たくなかった。この人たち、なんでトップアイドルになってもこんなことやらされてんの、ものすごく忙しいはずじゃないの、それぞれが一人でファンを楽しませられる人たちじゃないの、どうして拒否できないのって思ってた。堺正章は単なる趣味だなと思えたから、安心して見ていられたのだけど。