私が考えた、ある程度の数の方々が納得しそうなシナリオ。
ニュースサイトのコメント欄に「SMAPが可哀想だ」「事務所が謝るべきだ」と必死で書き込んでいた数千人の人々は、いまや完全に生気を失っていた。「あんなに頑張ってぽちぽちとボタンを押したのに、結局のところは私たちの望まぬような形で、痛ましい謝罪放送が行われてしまった。これが法治国家の実態なのか。長いものには巻かれるしかないのか。大物芸能人にも助けることができないのだから、私たちにできることなど何もないのだな。なにしろ私たちは、めざましテレビに一矢報いることすらできなかったのだ。きっと私たちの人生も同じだ、納得のいかないことで謝りながら、小銭をかすめ取られ、自由を奪われ、こんな感じで一生が終わっていくのだろうな」と意気消沈するばかりである。
しかし、このままでは悔しすぎると考えた一人が、「自宅にPCのある普通の人々(そして Yahoo! ニュースにコメントを書ける程度には時間のある人々)が実力を発揮できる唯一の捌け口はサイバー攻撃である」と訴えて、スクリプトキディ軍団を結成。そのロゴには、どこかで見たようなお婆さんの生首を掲げた、少し汚れたキティちゃんが使われる(単に「キディ」から連想しただけという非常に素直なアイディア)。最初はびくびくしていながら活動を始めた団員も、「あのサンリオに喧嘩を売ったのに、どうやら身元を割られていないようだぞ?」ということを認識したあたりから士気を高める。優秀なハッカーでなくともコツさえ掴めば攻撃できる、という手軽さで、団員はどんどん増える。
やがて「Script kiddies for SMAP」、通称 SKS による第一回の攻撃が首尾よく進められる。まずはジャニーズ事務所、次にフジテレビ、そして事務所からのリーク情報を掲載していたスポーツ紙、さらにはスポンサー(ほとんどとばっちり)等のサーバが一斉にDDoS攻撃を食らう。なにしろ団員は Yahoo! ニュースで赤ポチを集めることに飽きはじめていた数万人の市民。なおかつ北朝鮮に劣らぬほどの生真面目さと団結力を誇る国民性なので、けっこうな威力だ。
「アニメ中継の最中に台詞をツイートしたら、負荷がかかりすぎて、特になんの恨みもない Twitter のサーバが落ちたぞ」というシンプルな現象に参加するだけで喜んでいた無邪気な人々にとって、狙った大手企業のネットワークが次々と落とされていく様子は格別だった。楽しくて楽しくて仕方ない。とにかく達成感が桁違いだ。死んだ魚のようだった目に輝きが戻る。絶望的に見えた日常に小さな光が点る。ひたすら爽快なので背筋も伸びる。「母さん、最近なんだか綺麗じゃないか」「そう? ちょっといいことがあったの。そのせいかしら、うふふ」といった具合で少子化にも歯止めがかかるかもしれないのだが、その件はいったん置いておこう。
数回の一斉攻撃を経て、おそらくは様々なウェブサイトが改ざんされ、そこに罵詈雑言や楽しいコラージュが並ぶだけではなく、多くの組織のサーバから「いろんな情報」が出てくる。マイナンバー対策がろくに進んでいないことからも分かるとおり、多くの日本の組織は、「うちなんてサイバー攻撃の対象になる理由がない」と油断している。そこに降って湧いた攻撃に、多くの企業は右往左往するばかりなのだった。
このようにして各社のデータベースからごっそりと得られた裏金や恐喝にまつわる不正情報は、次々と SNS で晒されていく。しかし攻撃対象に少しばかりの損害を与えることはできても、ジャニーズの経営体制が人権的な問題として取り上げられることはほとんどなかった。国外に訴えたところで見向きもされない。なにしろ国外の人権活動家たちは日本の芸能ネタになど微塵も興味がないし、なぜ 40 歳前後のボーイズグループがこれほど注目を浴びているのかも理解できない。たとえSMAPの名を知っているようなオタクでも、「キムタク」以外のメンバーを知らないのだ。
しかし、ある情報をきっかけに風向きが大きく変わる。最初は「
やがてアムネスティ、ヒューマン・ライツ・
すみません、ここまで書いて力尽きました。もうすぐ打ち合わせの時間ですので、