Kaurismäkish

もう熱は下がっていたのだけれど、急にトイレへ駆け込みたくなるのが怖くて外出できなかった。しかし往復7万円も払って日本まで来ているのだ。このままではいかんと思ったので、渋谷のマツモトキヨシで下痢止めストッパを購入してからユーロスペースに行った。大好きなアキ・カウリスマキの新作「希望のかなた」(35mm上映)を見てきた。

一言で表現するなら「カウリスマキ濃縮還元」みたいな感じだった。悪口みたいに聞こえるかもしれないけど、力いっぱい褒めてる。見ているだけで淡々と嬉しい。当たり前だけど犬も最高だった。大満足だ。浮き雲より好き、とまでは言い切れないけど。

カウリスマキ映画でたったひとつだけ困るのは、鑑賞中にやたらと煙草を吸いたくなるところだ。ほとんどの映画の喫煙シーンは「吸いたさ」を誘うものだけど、カウリスマキ映画の場合はそれが異常に強いのではないかと思う。希望のかなたも、登場人物と一緒に吸いたくなるシーンが4回ほどあった。最後の1回は本気で厳しかった。

私の記憶が正しければ、昔の汚かったほうの池袋文芸坐には「客席がそこそこ空いてる状態なら煙草を吸ってもいい」という暗黙のルールがあった。あまり人気のないタイトルが上映されたあと、劇場の床は吸い殻だらけだった。だからカウリスマキ映画を見るには最高の映画館だった。もう、どんなにダダをこねたって、あの頃には戻れない。それでいいと思う。それでも生きていこう。