Encouraging Autonomy

カナダに住んでいる人の多くはとても親切だ。とんでもなく親切だ。ただバスのチケットを探すためにカバンをゴソゴソ漁っていただけで、「見つからないのなら、これを使いなさい」と現金を手渡されたこともある(受け取らなかったけど)。どう言ったらよいのだろう、とにかく困っている人を見たら助けずにいられないような人が多いのだろうなと思う。

だけど「余計な干渉はしない」精神も妙に強いから、無駄なお節介は焼かない。大事なお客様を手取り足取りご案内するようなことはないし、「ここを押さえて開けてください」みたいな説明が商品に書かれていることもない(だから日本に帰ったときにクレラップのパッケージなんかを見ると、まるで幼児向けの製品みたいに見えるので驚いてしまう)。すげえ気が楽だなあ、こっちのほうが好みだなあと思う反面、「ちょっとほったらかしすぎないか」と感じることもたまにある。それは私が日本人だからなのだろうけど。

今日の休み時間、学校の職員さんに呼び止められた。

「あなた、別の学校でNVCIを受講したことはある?」
「え?」
「あなたのコースを卒業するにはNVCIの受講が必須条件なの。来週火曜日の朝から夕方まで、同じフロアの〇〇教室で受ける? いま申し込めば間に合うよ」
「えーと……それは何のことでしょうか、受講のスケジュールには書いてありませんが」
「あなたが持っているスケジュールは『授業』のスケジュールです。必須の一日研修プログラムは他にもたくさんあるから、今後はウェブでチェックしてください」
「あ、ここには書いてないんですね」
「生徒によっては、すでに修了証を持っている人もいますから書いてません。修了証を持っていないものは、自分で探して申し込んでね」
「あ、はい。じゃあ今回の分は、いま申し込みますが……来週の火曜日の授業はどうなるんでしょう?」
「それは教師と個別に相談して。たぶん前日か翌日にテキストをもらって、自習で頑張ることになるでしょう」
「分かりました。もうひとつ質問してもいいですか」
「もちろん」
「NVCI、ってなんですか」
「Non-Violent Crisis Intervention のことです」
「……ありがとうございます」
「なぜ、そんな顔をするのですか。なにか困っているのならオフィスに相談してください。火曜日は都合が悪いのなら、また受講できるチャンスはありますよ」
「いえ、そうじゃないんです、なんでもありません」

まさかスケジュール表に書かれた内容のほかに、学習しなければならないものがあるとは思っていなかった。それをいま唐突に言われるとは思ってなかった。たぶん学校のサイトにログインすれば案内が書かれていたのだろう。完全に見落としていた。まして自分に足りてないコースを自分で探さなければならないとは一度も考えたことがなかった。あと、いきなり「知ってることが前提」みたいな雰囲気でNVCIとか言われるとは思わなかった。

そして「Non-violent Crisis Interventionの受講」とか言われても、内容を少しも想像できない。大丈夫なのか。