一体どこから持ってきたんだよ、と驚くような中古の冷蔵庫を、大家さんが運んできてくれた。なぜ驚いたのかというと、その冷蔵庫が「かなり旧式っぽいデザイン」で、なおかつ妙にサイズが大きかったからだ。六人家族でも充分に対応できそうなサイズ。
でも、その冷蔵庫を家に入れるのは大変だった。まず、いきなり玄関のドアでつっかえた。どう見たって、あきらかにドアの幅のほうが狭いのだ。
別の冷蔵庫が来るまで、あと数日かかるのだな。大家さんは、この冷蔵庫をどうするつもりなんだろう。なんで先に計測しないのだ。私はそんなことを思いつつ、隠しきれない呆れ笑いを浮かべて眺めていた。
このままではドアを通れないと判断した大家さんは、「そうじゃないかと思ってたんだー」とか言いながら、物置から道具箱を持ってきた。そして冷蔵庫の扉のネジを外し、ドアと本体を別々にして部屋の中に入れる。その後、なんとかギリギリでキッチンの入り口を通り抜けた冷蔵庫は、元の冷蔵庫（小さめ）があった場所にドカンと置かれて組み立てられた。でかい。すごい圧迫感だ。でも嫌いじゃない。
「うーん、どうにか収まったけど、これだとキッチンの扉が閉まらないねえ。やはり大きすぎたか」
「いいですよ。ここ、ふだん開けっ放しなんで」
「あ、そう？ あと、冷蔵庫の中なんだけど、こことここのパーツがなくて」
「きちんと冷えてくれさえすれば、どうにでもします」
というわけで、我が家のキッチンは、今日から扉が閉まらなくなった。こういうの、気になる人はすごく気になるんだろうなと思う。私は少しも気にならないけど。
