いま仕事上で、いろいろと辛い状況になりつつあるので、まったく関係のない不毛な怒りをぶつけてみたい。
日本のインターネットユーザーが頻繁に利用する「神」という表現が、あまりに安すぎてイライラする。ほんのちょっとのことで、たちまち「神レベル」だ。なんなんだあれ。なんでも大げさに言うのが楽しいのか。そういうゲームか。控えめに言うと死ぬのか。
レイザーラモンRGに物真似された有名人が、物真似されたことに怒らず、衣装の提供を申し出れば、それだけで「神対応」なのか。それは、「ちょっといい話」の範疇だろ。「神」じゃねえだろ、どう考えても。
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最近、「この人に関しては、『神レベル』とか表現する人がいても仕方ないな」と個人的に思ったのは、カナダのホッケーチーム「Montreal Canadiens」の人気選手、27歳の P.K. Subban だ。先日、彼はモントリオールの小児病院に1000万ドルを寄付することを発表した。日本円で、だいたい10億円弱だ。
彼の何が凄いって、これだけ巨額の寄付をしたのに、ぜんぜん「命の大切さ」とか説教くさいことを言わないうえ、ちっとも感動的な味付けをしなかったところだ。「すげえ気持ちよかった。最高。今日が人生のハイライト。カナダのスポーツ選手が寄付した中では最高額でしょ?」ということを臆面もなく、わくわくとした表情で語ったところだ。
ちなみに彼は黒人で、彼の両親はカリブ海から来た移民だ。1000万ドルを寄付した今なら、いろいろと主張することもできただろう。でも彼は、そういった話題には何も言及しなかった。インタビューで「なぜ、それを決断したのか」と尋ねられても、ちょっと涙を誘うような、可哀想な子供のエピソードの一つも語ることなく、「やりたかったから」と答えた。おそろしく無邪気だ。
ついでに言えば、彼はトロント生まれなので、その小児病院のあるモントリオールは地元ですらない。ただ単に「いま所属しているチームがある場所」だ。これまでに彼は複数の都市のチームでプレイしているうえ、まだ27歳なので、「ずっと自分を愛してくれた地元ファンのために」という話でもない。
かなり人間離れした行動だと思った。神レベル、でもいいと思う。