マルバタイジング

本日の業務。翻訳2本。匿名コラム調整。以上。

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マルバタイジングという言葉が日本の記事でも使えることに感謝している。これをいちいち「悪意を持った広告」「悪意のある広告」「悪質な広告」などと書いていたら、ニュースの翻訳が読みづらくなっていただろう。たとえば

「先週金曜日、非常に洗練された悪意のある広告が、AやBなどの人気サイトのバナー広告にも影響を与えているということを、C社の顧問でありD大学の特別講師でもあるE氏が発見した」

「A社のセキュリティ研究家B氏も、この新しく発見された悪質な広告の活動が、過去に類を見ないほど活発であるという点に注目している」

とか書いてあったら、何の話をしているのかが分かりづらい。ぱっと読もうとしたときに目が滑る。助詞が入ることによって文章の構成も汚くなりやすい。これを「非常に洗練されたマルバタイジング」「新しく発見されたマルバタイジング」にすると、格段に読みやすくなる。

なにが「ローンチ」だ、なにが「アップデート」だ、なにが「スキーム」だ、なんでもかんでもカタカナで書きやがって、とおっしゃる方々の気持ちはよく分かる。私も、それらをなるべく避けるように努力している。しかし状況によっては、そのほうが読みやすいし分かりやすいし誤解されにくいのだから、少しだけ我慢していただけないだろうか、とも思う。

たとえば「著者は、このローンチを『業界参入』の意味で使っているのか、あるいは『新しいサービスの立ち上げ』の意味で使っているのか」が分からない状況もある。アップデートもすべて「更新」に訳せるわけではない。「何をアップデートするのか」によっては異常に文字数が増えてしまう場合もある。スキームはスキームとしか言えない。その単語が出てくるたび、いちいち丁寧に日本語で翻訳しようとすると、本当に何の話をしているのか分からなくなるだろう。いっそ、それらに替わる日本語(助詞の入らない一つの単語)を生み出してもらえたら、それが一番いいのかもしれない。誰に頼めばいいのかは知らないけれど。

ちなみに私の場合は、「ビジネスモデル」とか「コンテンツマーケティング」とか「オウンドメディアのソーシャル化」とかいうようなカタカナ語が大嫌いだ。虫酸が走るほど嫌いだ。その理由についてしばらく真剣に考えてみた。要するに、「そのへんの言葉を仕事で多用してそうな人たちが苦手だから」であろうという結論が出た。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、だ。

というわけなので、あなたが「マルバタイジング」に苛立つとしたら、それはきっと、私のような仕事をしている人たちが嫌いだからですよ。たぶん。そうでもないですか。

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【本日、アップロードされたお仕事】 翻訳 1 本。この記事の中にも「ロングテール」という言葉が出てきます。なんとか「ロングテール」を使わずに翻訳したかったのですが、途中であきらめました。