Alongside the Pier

非インタラクティブな私にむりやりメッセージをくださった方々へお礼を申し上げたい。お気遣いありがとうございます。ふて腐れててすみません。

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新宿のホテルに泊まれなくなって久しい。昔は新大久保と新宿の中間ぐらいにある安いホテルを探して泊まっていたのだが、いい具合に古びた大浴場つきのカプセルホテル(レディース510)に惚れ込んでしまってからは、新宿のホテルなど予約できなくなった。

しかし、いつからだろう、510の女性フロアのカプセルは急に予約を受け付けてくれなくなった。たしか前回も前々回もそうだった。どの日程を見ても空室がゼロなのだ。何が起きているのかは分からない。もしかしたら完全に「すみか」として長期契約をしたお客さんだけで、すべての枠が埋まってしまったのかもしれない。

501には泊まれなくなってしまったけれど、それでも私は「カプセルの中で昆虫のように眠ること」自体が大好きなので、最近では新宿近辺へ行くたびに別のカプセルを求めて放浪している。しかし、どうも新宿の510以外のカプセルには素敵な場末感がない。いろんな過去を背負ったまま、いまも戦っている孤独な女だけが入館を許された波止場のごときハードボイルドさが少しもない。控えめな音のテレビが流れているヤニ臭い休憩スペースも、妙に納豆定食が出がちな食堂も、常に異音を発しているサウナもない。どこを見ても清潔で新しくて全体的に明るい。希望に満ちた娘たちが、翌日のイベントに備えて友人と一緒に泊まったりしていることもある。カプセルなのに、ノリがレジャーなのだ。はっきり言ってぜんぜん落ち着かない。

私は入れ墨だらけのベトナム人のおじさん軍団に囲まれても、ラスベガスの激安モーテルで酔っ払いの黒人男性に絡まれても怖さを感じることがないお得な性格なのだけれど、「ぱっと見の似ている女性たちが楽しげに集まっている場所」は非常に苦手だ。単純に怖い。なんだかよく分からないけど怖くて仕方がない。彼女たちの楽しそうな声を聞いていると、自然な呼吸ができなくなる。510以外の新宿のカプセルでは、運が悪ければ、そういう感じの人たちと隣り合わせになってしまうのが困る。

私も、そろそろカプセルを卒業するべきなのだろう。もう結構な年なのだ。日本に到着した日ぐらいは、ゆっくりと部屋で荷物を広げたり、テレビを見ながらビールを飲んだり、大きなベッドでゆっくりと寝返りを打ったりするべきなのだろう。そう思って新宿のホテルを検索してみたものの、思うようには見つからなかった。なぜだろう。昔の私が新宿のホテルに泊まっていた頃は、利便性さえ少々我慢すれば、わりと手頃な価格の宿が複数あったはずだ。あのあたりのホテルはなくなってしまったのだろうか? それとも大幅に値段が吊り上がってしまったおかげで検索結果に表示されないのだろうか? 不思議に思ったので、ずっと昔の宿泊予約のログを読んでみた。まったく驚いたことに、どうやら昔の私は、1泊7000円~8000円の部屋を「わりと手頃な価格」だと思って予約していたようだ。

ただ眠るだけの場所に、4000円以上を支払う習慣がなくなって久しい。