Beehive

現在の私が地下室を間借りして住んでいる一軒家では、二階の外壁に大きな蜂の巣がへばりついていて、その出入り口からは忙しそうな蜂たちが盛んに往来している。高校生の頃にアナフィラキシーショックを起こした者としては、ただ生活しているだけで死が身近に感じられるという状況なのだが、それを大家に告げてしまったら、あっさりと巣を駆除されてしまう可能性もある。それはそれで気分がよろしくないので、ただただ不幸な接触が起こらないことを祈るばかりだ。

ところで先日、この蜂の巣のことを友人Sに話したかったのだけれど、蜂の巣に該当する英単語が思い当たらなかった。

「あんたの家、最近どうよ。あいかわらず上階の子供、家の中でバスケットボールをバウンドしてるの?」
「うん、相変わらずうるさいんだけどさ、それよりも困ってるのが、うちに蜂が来てて……ああ、単語が分からないな。蜂の nest って、なんて言うんだっけ」
「beehive。beehive があるの? 怖いじゃん」
「それそれ、beehiveがあってね……え、beehive って beehive か! そうか、当たり前だ、でもいま分かった、そうか!」
「どうしたの」
「いや、ちょっと面倒だから説明しない」

私が David Sylvian のアルバム「Secrets of the Beehive」のCDを買ったのは、もう20年以上前のことだった。かなりの頻度で再生しまくったはずだ。それなのに、一度もアルバムのタイトルについて調べたことがなかったのか、あるいは大昔に調べて納得したにも関わらず、記憶から完全に飛んでいたのかは分からない。