そもそも、なぜ蓋がないのか。

私がウェブカメラカバーを装着しているのは、もちろん盗聴行為を防止するためでもあるのだけれど。それは私にとって、むしろヒューマンエラーによる被害を食い止めるために不可欠なツールだ。

家の中にいるときの私は、全裸であることが多い。媒体の担当者さんとSkypeで打合せをする際も、だいたい全裸だ。したがって、先方から入ったコールを受信するとき、うっかり「ビデオ通話」のボタンを押したら大変なことになる。ただでさえ不安定なタッチパッドの操作で、たった1度のクリックが数センチずれただけで、取り返しのつかない事態になるのだ。場合によっては仕事を失うだけでなく、性的な嫌がらせと判断されて訴えられるかもしれない。恐ろしすぎる。そのような甚大な被害を呼ぶツールが、そもそも剥きだしになっているほうがおかしい。

たとえユーザーが全裸でなくともだ。

「PCに向き合っている自分の動画や静止画」をユーザーが必要とする機会など限られている。ぜんぜんいらない、というユーザーも珍しくないだろう。そして、たとえウェブカメラが必要となる状況であっても、そのときに1秒2秒を争うことは滅多にないはずだ。「使いたいときだけレンズの蓋を開ける」という一工程によって、生産性が大きく損われるとは思えない。それなのに、ウェブカメラを利用したダダ漏れの盗聴行為はさんざん問題視されている。この点だけを考えても、利便性とセキュリティのバランスが完全に狂っているのではないか。ラップトップのメーカーは、ほんの少しでもユーザーを守りたいという気持ちがあるのなら、デフォルトでウェブカメラに「物理的な蓋」をつけるべき(あるいはせめて、私が利用しているような貼り付け型の開閉カバーを同梱するべき)だと私は思う。

偉そうなことを言う前に、とりあえず仕事中は服ぐらい着ろ、という意見もあるのかもしれない。もっともだ。しかし私は、その点に関して正論を求めてはいない。そして、フリーランスにはフリーランスなりのメリットを存分に生かす権利があるはずだ、ということも加えて述べておきたい。