Prone to

カナダの税制は、一人暮らしの質素なフリーランスに対して恐ろしく厳しい。びっくりするぐらいの税金を持って行かれる。それも無理のない話なのだろうと思う。たとえばカナダの企業に勤めている人であれば、国の厳しい労働基準法に従っている(つまり、あまり長時間は働くことができない)。それで私と同じぐらいの収入を得ているのなら、それなりに悪くない条件で働いているはずなのだ。カナダのアルバイトの最低賃金を下回るような効率の悪さで、土日も休まず、日本の企業との契約でメシを食っているフリーランスの人間(しかも日本から振り込まれる原稿料は自動的に10%の源泉徴収をされている)のための特別枠なんて設定されていない。だから働けば働くほど時給がみるみる下がる。「100 時間の労働をプラスしたら、その原稿料のおかげで年間の収入が一定基準を超えた。その結果、100 時間プラスした分の儲けは 200 ドルにも満たなかった」みたいなことが平気で起こる。つまり、何度も徹夜しながら働いた一週間分の超過労働が 1 万円ちょっとになったりするのだ。ことによっては「結果としてマイナス」のケースになることも充分に考えられる。だからこそ、ちゃんと年収を決めてから働くべきなのだ。しかし私の収入は円相場に左右されるので、そういった調整もままならない。

あまりに馬鹿らしいので、最近は明確な低所得者層になれるよう仕事を減らす方向で動いている。そして実際に仕事は減ったはずだったのだけれど。いつ収入がゼロになるか分からない商売をしているので、どうしても「求められている間は仕事をしたい」と思ってしまう。こればっかりはどうしようもない。まして「時間があるなら何本でも書いてください、何本でも掲載したいです」とか、「どんなネタでも構いません、僕が個人的に読みたいんです」とか、そういう魔法の言葉を操る編集者さんがいると、おだてに弱い私はすぐに意志を曲げてしまう。どうやっても断れない。誰かが強制的に止めてくれないと、どうにもならない。

今年は円高が続いたから、ますます今年度の収入申告が危険なことになりそうな気がしている。3 ヶ月ぐらい何も仕事をできなくなるように、誰かが車で跳ねてくれるのを待っている。死なないけど入院が必要となるぐらいの速度で、うまいこと轢いてほしい。