もうすぐ専門学校のクラスが始まってしまう。
正月から仕事をしたくないという気持ちより、いまはむしろ学校に行きたくない気持ちのほうが強い。もういい年だし、いまさら勉強なんて本当はしたくなかった。知らない人たちと仲良くするのだって面倒くさい。毎日バスで通学するのなんて無理だ。なぜ私はこんな無茶なことを決断してしまったのだろう。いやだ。せっかくフリーランスで働けるようになったのに、わざわざ学校なんか行きたくない。学校に行くぐらいなら死んでしまいたい。なんで入学の申し込みなんてしちゃったんだろう。たぶん、それを決めたときの自分は気が狂っていたのだ。そうに違いない。どうしよう。なにやってんだか分からない。怖い。もうダメだ。
これは行き詰まったなと思ったら、急いでうどんを打つ。うどんは本当に良い。生地を延ばしていると心が平べったくなる。それを畳んで丁寧に切っていると頭がクリアになる。
海外生活で何よりも役立っているのは、もしかしたらうどんを打つスキルかもしれない。どんなに自信をなくしても、どんなに目標を見失っても、どんなにアイデンティティを崩壊させても、どんなに明日が見えなくなっても、「まあ、とりあえず、ただの粉と塩水をうどんに変えられてしまう自分は、だいたい魔法使いみたいなものだから大丈夫だ」という気持ちになれる。しかも打ち立てのうどんは美味しい。お腹がいっぱいで幸せになる。あと茹で時間が長めだから部屋の湿度も上げられる。なんて素晴らしいのだ。