実は効率が悪い

本日の業務。DEF CON 23の原稿下書き2本。

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「ライターは、海外のイベントに行っていっぱい取材すれば、いっぱい記事を書いて金を稼げるのだろう」と。そのように思われているフシがあるような気がする。むしろ逆だ。どちらかといえば極めて効率が悪い。

まずレギュラーの仕事を何日分も休んで取材に行くから、最低限として期待できる賃金はがっくりと目減りする。そうまでして得られる情報には当たり外れがある。なるべく事前に下馬評を手に入れてから現地入りしたいのだけれど、同業者で助け合えるほど余裕のある世界でもないから、なかなかそうは行かない。そして直前までレギュラーの仕事にも追われているから、あまり事前調査に時間を割けない。

現地でアタリを引いたりハズレを引いたり、ハズレであることが分かった状態で50分の足止めを食らったりしながら、重い機材を持ってうろうろと練り歩く。メシを食う暇が毎日あるとは限らない。疲れ果ててホテルに戻って、あわてて記事を書いて送っても、普段のように「内容の打ち合わせをしてから書いた記事」ではないので、あっさり没を食らうこともある。

自宅に帰ってきてからも、写真の整理やら、その加工やら、テープ起こしやら、資料の確認やらで時間を取られまくる。ベッドの上までガジェットが広がる。いたるところに記録媒体が散らばる。スーツケースは部屋の真ん中で広げられたままだ。それでも早く記事を仕上げてしまわなければ、どんどんネタが古くなる。さらに普段の仕事も始まってしまう。焦れば焦るほど業務に乱れが生じる。どこに何を送る約束をしたのかも分からなくなる。

出張費や経費を出してもらえる立場でもないかぎり、たぶん遠くでやってるイベントの取材なんて行かないほうがいい。それでも行くのはなぜだろう。もちろんイベントそのものが好きだからという理由もある。しかし、それなら最初から割り切って、完全に遊びに行ったほうがなんぼかいい。わざわざ仕事で行くのはなぜだ。たぶん「なんとなくライターっぽいことをしている自分の姿」に安心できるせいだろう。たいへん間抜けな話だ。小学生みたいだ。